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  ミニスカート   12 

海沿いの国道にあるコンビニの駐車場に車を停めながら、私は教えられた車を探した。
まだひろかずは来ていない様だった。

私は彼に電話をかけてみた。

「ああ、もう着いたの?」

初めて聞くひろかずの声・・・。
メールの印象とは違い、低くて落ち着いた声だった。

「風呂入ってたんだ。すぐ行くよ。」
タオルで髪か何かを拭っている様な音がした。

「お・・ 風呂?」
私は驚いて言った。 何で今?
ひろかずの行動は、全く意表をついていた。


しばらくして、私の隣に停まった車から長身の男が降りて来た。

「いやあ、何かさあ、温泉の看板が目に入ってさあ・・・ 無性に入りたくなっちゃった。」

ぬれた髪を手でくしゃくしゃしながら、ひろかずは私の顔を覗き込んで言った。
「まんまじゃん。」
私のページの写真が本物かどうか、彼は半信半疑だったらしかった。

「あなたはもっと、子供かと思ってた。」
五歳年下の彼は、実際に見ると落ち着いていて大人っぽかった。

「渡したい物があるんだ。」
私は少し躊躇したが、手招きに応じてひろかずの車の助手席に乗り込んだ。

「はい、これ。」
彼に渡されたのは二枚のCDRだった。
二人が好きなバンドの名前が印字されたテープが貼ってあった。
「独断と偏見でベスト盤作ったんだけど・・・。結構時間かかったんだよ。」
思いがけない贈り物に私は感激した。


目前に海峡が迫るコンビニの駐車場で、買って来たジュースを手にひろかずと私はあれこれ話した。
夢中で話していると、私の携帯が鳴った。

「娘を迎えに行かなきゃ。」
少し残念そうにひろかずは車を降りた。
「また会おうね。」


私はコンビニを後にしながら、複雑な心境で駅に向かった。


 
 実はさ・・・。
 怒らないでね。

その夜、ひろかずからメールが来ていた。


 
 ほんとはキスしたかったんだ。




(続く)
















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  ミニスカート   13 

ひろかずは当時、会社の独身寮で生活していた。
彼は航空機の整備士で、以前は千葉の自宅で家族と一緒に暮らしていた。
その年の春に成田から大阪に転勤になり、とりあえず単身で寮に移ったのだった。

「家族と離れて寂しくない?」
「ちょっとね。子供もまだ小さいし・・・。いずれこっちに呼ぶつもりではいるんだけどね。」

私は車の中でひろかずが言った事を思い出していた。
家族思いなのに、私に「キスしたい」だなんて・・・。

気をつけないと・・・ と思ったが、その時既に私は彼に惹かれ始めていた。


ひろかずにもらった二枚のCDを聴きながら、私はよく彼の事を考えるようになった。
彼のほうも熱心にメールして来るようになっていた。


最初にコンビニで会った日から二週間ほど経った頃、私は再びひろかずと会う事になった。

 キスさせてね。
-ダメよ、何言ってるのよ。-

 じゃあ、手を繋ぐのはいいでしょ?
-そんなの、メールで決める事じゃないでしょ?-

ひろかずが諦めず、打ち合わせは埒があかなかった。


でも、私はきっと心の奥で何かを期待していたに違いなかった・・・。





(続く)












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  ミニスカート   14 

ミニスカートは、キスを引き寄せてしまうのだろうか・・・。


「こういうの、慣れてそうね。」
森林公園の散策コースをゆっくり歩きながら、私はひろかずに尋ねた。
平日の日中で人の気配が無く、あたりは静かだった。

「・・・というと?」
彼は立ち止まって私の方を向いた。

ひろかずは七年程前、チャットで知り合った何人かの女性と交際していた。
私はその事が気になっていた。

「俺はもともと真面目で遊んだ事が無かったんだ。
子供が生まれた時ちょっと浮気したけど、もうそんな事は止めた。」

(・・・なのに、また?)
私はちらりと気になったが、急に脇道に入って行ったひろかずに続いて曲がった。

するとひろかずは立ち止まり、いきなり私を抱き寄せてキスしようとした。
私が戸惑いながら目を閉じると、彼は動きを止めた。

「やだ。」私は目を開けた。
「いつ唇を奪われてもいいって顔してるよ。」そう言って、ひろかずは素早く口づけした。
背中に回した長い両腕でぎゅっと抱きしめられた私は、だんだん自分の心が解き放たれていくのを感じた。

時折小鳥がさえずる声が聞こえるだけのしんとした木立の中で、私とひろかずは暫らくじっと抱き合っていた。


彼と実際に会ったのはまだその日が二度目だった。


ひろかずが最初にメールして来た日からひと月後の、秋の初めの頃だった。



(続く)











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  ミニスカート   15 

-どうしてキスしたの?-
 
 好きだから

-いつから?-

 初めてミカの写真を見た時から


何故、そんな事が言えるのだろうか。
写真を見ただけで心が動かされたりするのか。
私にはその心理が分からなかった。


ひろかずはそれから間もなく、海外出張の為寮を離れた。


彼からの連絡が無くなってひと月が経ったある夜。


 ただいま
 帰ったよ

ひろかずから短いメールが届いた。
それを見た時、私は自分がどれだけ彼の帰りを待ち侘びていたのかが分かった。
(私の元に戻って来る訳じゃないのに・・・。)

ひろかずも私と同じ思いをしていた様だった。
 
 時間作れないかな・・・ おみやげがあるんだけど。



数日後、待ち合わせの場所にひろかずは少し遅れて現れた。
私は逸る気持ちを抑えながら彼の車に乗り込んだ。

「お帰りなさい。」
「ごめんね。渋滞してた。」

ひろかずは優しく微笑みながら言った。
「目を閉じて。」

(えっ?)

彼は私の指にひんやりした物を通した。

シンプルなアクリルのリングだった。
「・・・ありがとう。」

私は心で歓声を上げていた。
「嬉しい・・・。」

「イミテーションだけどね。喜んでくれて良かった。」

ひろかずは出張先で思ったほど時間がとれず、私のおみやげ探しに苦労したらしかった。

「でも、指輪は指輪だしね。」


彼も嬉しそうだった。



(続く)















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  ミニスカート   16 

「ゆうべね、いろいろ考えて眠れなかった・・・ これから先、どうするのがいいのかって。
今ならまだ、引き返せるよね。」
車の中でひろかずは、真剣な眼差しで私の方を向いて言った。

私は黙って右手の指輪を見ていた。

「ほんとに寝ずに考えてたんだ・・・ 」


ひろがずと私はパスタランチした後、ホテルに行った。



その夜、私もなかなか寝つけなかった。

 おもちゃでも指輪は指輪・・・

ひろかずに貰った指輪を見つめながら、私は彼の言葉を思い出していた。

(私は一体、何を喜んでいるんだろう・・・)

いくら考えても答えは見つからなかった。

私はひろかずとの関わりによって、自分の中にあった”隙間”を埋める事が出来たのかもしれない。
でもそれは、また別の寂しさを呼び込む事になってしまった。


それから彼と私は毎日メールを交わし、月に一度は時間を作って逢っていた。
私は彼を心の恋人として慕い、すがった。
でも彼はいつも冷静で、二人の間にきちんと線を引いている様に思えた。
それは二人の関係を続ける為にも当然の事だったのだが、私は悲しい気持ちに包まれる事が多くなった。

 これから色々あるだろうけど、ミカとの関係を大切にしていきたいと思ってるよ。


私はひろかずの言動に一喜一憂していた。



(続く)











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  ミニスカート   17 

「家族をこっちに呼ぶ事にしたよ。」
ひろかずはコーヒーカップを口に運びながら言った。
店内にはX'masソングが流れていた。

「そうなの・・・。」
私は窓の外に視線を移した。
山積みになったX'masケーキの箱の前で声を張り上げる店員と、そこに立ち止まっている親子連れやカップルが目に入った。

「来年はこんな風にイブの夜に会うのは無理ね。」
私もカップを手に取った。

「そんな事ないよ。何とでもなるさ。」

その頃、ひろかずが勤める航空会社の経営難が深刻化していた。
彼は自宅を引き払い、家族と共に社宅に移ることを余儀無くされたのだった。

「いよいよ厳しくなってきた。先が見えない状態なんだ。」
そう言いながら、ひろかずも窓の外に目をやった。


年が明けて間もなく、彼の会社は経営破綻した。
周囲の状況が激変した彼は、日々様々な対応に追われている様子だった。
当然メールの回数も減り、二人が気軽に逢える環境では無くなっていった。

 ごめんね、色々大変なんだ。
 しばらく我慢して欲しい。

ひろかずはいつもメールで謝っていた。

そして、子供たちが春休みに入ると彼は独身寮を出て社宅に移った。


まだ肌寒い、桜の咲き始めの頃だった・・・。



(続く)







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  ミニスカート   18 

ひろかずと連絡が取りにくくなった私は、一人寂しさに沈んでいた。
でも、家族はそんな私の変化に全く気づいていない様子だった。
主人は良くも悪くも、人の気持ちに鈍感な人だった。


五月の連休明けに、私はようやくひろかずに会えた。
彼の出勤前の僅かな時間を利用して、空港で会う事にした。

リムジンバスの中で、私はあれこれ想いを巡らせた。

(今日が最後になるかもしれない・・・。)

気分を無理に上げる為に、持って来た缶のカクテルを飲んだ。


空港に着くと、駐車場にひろかずの車を見つけた。

「待った?」 私が勢い込んで助手席に座ると、
「ううん。」 と力無くひろかずは答えた。

上気している自分と冷静な彼との温度差を感じた私は、一気にクールダウンした。

「あのさ・・ 」

二人の間に重苦しい空気が漂い始めた。


「今日、抱いちゃってもいいのかな・・・。」

私は返す言葉が見つからず、悲しくうつむいた。


ひろかずは自分の仕事場のすぐ隣にあるホテルに車を滑り込ませた。


シャワーで汗を流した後、煙草に火をつけながら彼はこう言った。
「どうも上手く言えないんだ。」

私はじっとひろかずを見ていた。

「ほんと、今大変なんだよ。」

「終わりにしたいの?」
小さい声で私は尋ねた。

そういうつもりじゃない、と彼はきっぱり言った。
今は我慢する時なんだと思う。
逢えなくても気持ちは変わらない・・・。

(友達になるって事なのかな・・・。)

私はぼんやり考えた。


ひろかずは仕事に行く前に空港を案内してくれた。
作業場にはその日彼が見る旅客機が停まっていた。

エスカレーターに乗る時、彼が手を繋いできた。

「また会いたい。」
強く手を握り返しながら、私は振り絞るように言った。
彼は黙って微笑んだ。


「じゃあ。」
手を離してひろかずは仕事に向かった。


遠ざかって行く彼の後姿を、私は泣きそうになりながら見送った。



(続く)























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  ミニスカート   19 

終わってしまったのかもしれない・・・。

ひろかずからメールが来なくなって十日が経っていた。
私は平静を装い淡々と毎日を送っていたが、心の中は寂しさでいっぱいだった。
そして、二人の事を悲観的に考えてばかりいた。

日中はわざと用事を作ったりしてやり過ごせても、夜は布団の中で涙枕を濡らした。


五月晴れのある日曜日、久しぶりにひろかずからメールが届いた。
空港で会った日からそれほど時間が経っていないのに、とても懐かしい気がした。

 ミカ、元気かい?
 なかなかメール出来なくてごめん。
 俺はなんとかやってます。

彼の近況を連ねた文章の中に、期待していた甘い言葉は無かった。
ただ、ひろかずが目まぐるしく忙しい状況にある事は分かった。

-私最近ついてないの。あなたにはふられちゃうし・・・。-

すぐに返信した私に対して、彼からのメールはいつも何日も経ってから届いた。


私はひろかずから気をそらす為に、いい方法はないかとあれこれ考えた。


ふと、見知らぬ誰かと話してみたら・・・ と思いついた。

検索すると、メル友を探すサイトがいくつか見つかった。


私はその中の一番安全そうなところに登録した。


-寂しがり屋の私の話し相手になってもらえませんか?-

何人かのメールが届き、その中に祐樹のものがあった。


 僕はするめです。
 どうぞヨロシク・・・。



(続く)











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  ミニスカート   20 

 するめって、噛めば噛むほど味が出てくるよね。

祐樹の言葉はわかりやすくて素直だった。
彼とのメール交換は楽しく、心が和んだ。
他にも何人かとのやり取りがあったが、私は祐樹にだけ自分のアドレスを教えてサイトを退会した。

-ありがとう。祐樹のおかげで段々寂しく無くなってきた。-

 いつでもミカの話し相手になるよ。


私は彼と顔写真の写メを交換した。
祐樹は喜んではしゃぎ、私の写メを携帯の待ち受け画面にすると言ってきた。
私は少し戸惑った。


 彼氏は今、大変なんだと思うよ。
 僕も仕事柄、今回の破綻の件については以前から聞かされてたし・・・

祐樹は、ひろかずの会社への融資に携わるメガバンクの銀行員だった。

 でも、人それぞれ愛し方は違うと思う。
 彼氏は彼氏なりに・・・
 僕はこうしてミカを励ましながら、見守りたい。


祐樹は毎朝の出勤時と夕方の休み時間、そして寝る前とほぼ定刻にメールを送って来た。

彼は私を決して否定せず、どんな事も理解しようとした。

傷ついても、祐樹がいる・・・。
そう思うと、私はとても安心できた。

困った時の保険のように、私は祐樹を信頼した。



-私ね、メル友が出来たの。-

私はひろかずに、祐樹の事をちらつかせてみた。
彼の存在を気にするのかどうか・・・。


私はちょっとした駆け引きに出てみた。



(続く)












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  ミニスカート   21 

 何やってんの? 誰だよ、それ・・・

ひろかずは慌てて返信して来た様子だった。
私は少し、彼に気を持たせてみたくなった。

-知らない人よ。銀行員らしいけど。-

 何でそんな事するんだよ。
 危ないじゃないか!

そう言いながら、ひろかずは私の気持ちを知っていた。

 会いたい気持ちは俺も一緒だよ。
 でも今は無理なんだ。

-わかった。我慢する。-

私はそう言ったが、ひろかずからのメールが途切れるとまた寂しくなって祐樹を頼った。

 僕がいるじゃない・・・

祐樹の優しい言葉に、私は落ち着きを取り戻していった。


メールを交わすうちに、見ず知らずの相手に心惹かれるというのはとても不思議な事だ。
次第に私はメールの中で恋人のように祐樹に振舞うようになっていた。

 
 人の気持ちをもてあそんではいけないよ。

ひろかずは私に忠告した。

-そんな事してないわよ。向こうが勝手に思い込んでるだけ・・・-

私はひろかずと祐樹に対して話す内容を使い分けるようになった。

どちらにも、少しずつ嘘をついていたのだ。
けれども、二人とも好きだった。


 これからは僕がミカのパートナーだと自覚してる・・・

祐樹はきっぱりそう言った。

ひろかずは、将来私に自分の故郷へ来て欲しいと言ってきた。
彼の気持ちはとても嬉しかったが、祐樹の事が気になった。
悲嘆にくれていた私を救ってくれた祐樹を、簡単に見捨てる訳にはいかないと思った。


私は自分が傷つかないように、二人を天秤にかけて様子を見ていた。



(続く)











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  ミニスカート   22 

私の中で、ある誤算が生じていた。

二人を同時に好きになってしまうという事だった。
それぞれへの想いに違いはあったが、私は二人を同じく必要としていた。

結果、私はどちらにもいい顔をしなくてはならなくなった。


「俺の後ろに座ってたって? 何で言わなかったんだよ。」

久しぶりに私の前に現れたたひろかずは、早速祐樹の話を始めた。
ライブに祐樹が来ていた事を私が教えたからだ。

「えらい入れ込みようだな。やっぱりそいつ、気をつけた方がいいよ。」


ひろかずの予感は当たっていた。
ライブの日を境に、祐樹がひろかずを強く意識する様になったのだ。
私とひろかずの様子を目の当たりにして、祐樹の中に嫉妬心が芽生えたのだ。

メールだけの関係でいいと言っていた彼の態度に変化が現れ始めた。

 
 会う時期が来た・・・

祐樹はメールでこんな事を言う様になっていた。

その頃すでに、彼は私のPCメールのアカウントに侵入していたのかもしれない。
私はひろかずと交わしたメールは消さずに保存していた。
祐樹はそんな二人のメールの内容を見て、何を思ったのだろうか・・・。


彼が勤務する銀行は、その夏の終わり頃から当局の監査を受けていた。
連日の残業で疲れきった祐樹は、毎夜眠剤に頼っている様子だった。
彼にしては珍しく、愚痴をこぼすような事も度々あった。

そして、それまで規則的に届いていたメールが、ふと途切れるようになった。


 あとは会うだけだね・・・


私は祐樹の言葉に、何故か身の危険を感じた。




(続く)

















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