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  ミニスカート   61 

「手作り弁当っすか?」

考え事をしていた私は、背後に圭一が近づいて来た事に全く気づかなかった。

「美味そうだなあ。」
そう言うと、彼は私の隣に腰を下ろした。

「あの人達のヒソヒソがエスカレートして来ちゃって。」
ヨシアキの一件以来三人組の噂話は派手になり、食堂に居辛くなった私は一人土手で昼食をとる様になっていた。

「この前の事?」
圭一も少なからずヨシアキの事を気にしていた様だった。

「そう。だけど彼女達は話に肉付けするから嫌なの。」

彼は笑いながら頷いた。

明るい日差しに映える緑と川面を撫でる風が清々しく、私はもう混雑した食堂で食事をする気にはならなかった。


「食べる?」
私は圭一に割り箸を差し出した。

「いいんですか?」
「たくさん作り過ぎちゃった。 どうせ、うどんだけ・・ とかでしょ?」

「はい、まあ・・・。 じゃ、遠慮なくいただきます。」
圭一は照れながらも嬉しそうに答えた。

私は暫らく彼が弁当を頬張るのを見ていた。
あたりは昼休み特有の静けさに包まれ、小鳥のさえずる声だけが高く響いた。


「まだ悩んでるの?」

「はい。」
圭一は缶コーヒーを口にしてから答えた。

「私もよ。 悩みは尽きないわね。」


ゆっくりコーヒーを飲み干すと、彼は話し始めた。

「あいつ、他に誰か好きな男がいるみたいなんです。」
圭一は辛そうに目を逸らした。

聞いてみると、彼女の心変わりはまだはっきりした訳では無い様だった。

「普段からまめに連絡してたの?」
「いえ・・ 不精なほうかな・・・。」

圭一ははっとして顔を上げた。

「やっぱり、まずかったっすか?」

「それは相手によりけりだし何とも言えないけど、彼女が寂しくなっていた事は考えられるわね。」
私は圭一の彼女に自分を重ねてみた。


人の心は柔らかく形を変えやすいものだと私は思っている。
それゆえに傷ついても自身で癒す力を持っている。

人は不変のものに安心を求めがちだが、例えば「結婚」という揺ぎ無い契約をもってしても人の心を縛る事は出来ない。


「結局、どんな事も最後は時間しか解決出来ないのかもしれない・・・。」

時は、良くも悪くも必ず全てに決着をつける。

圭一は深く溜息をついた。
私も一緒に考え込んでいた。


そんな事などそ知らぬ顔の川の水は、明るく乱反射して軽いリズムを刻みながら二人の前を流れ続けていた。


(続く)










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この記事に対するコメント

Mikaさんへ

 Mikaさん、こんばんわ☆☆☆
心は難しいですね。本当に難しいです。
僕はあまり心情を見せることが苦手なので
小さなノートに「キミにあえない日は寂しかった」など
書いて、相手にそのノートを渡すということをしていました。

 自分で自分を癒す力を僕も個人個人が持っていると
思っています☆☆☆
 寂しくても、いつかは癒えますからね。
傷ついたら、ゆっくり治したいですね。

NORI #- | URL | 2011/04/14 20:02 * edit *

そうですね・・・

NORIさん、有難うございます。

心って、一体何なんでしょうね。

私は自分の心の変容についていけない時があります。

Mika♪ #- | URL | 2011/04/14 22:22 * edit *

「結婚」という揺ぎ無い契約・・・
こいつがけっこう揺るぐんですよね~

という話は置いといて、続きを期待してます(笑)

ZERO BlueStone #AgNguRKs | URL | 2011/04/15 20:15 * edit *

ZEROさん・・・

揺るぐんですね!(爆)
どういう風に揺るぐんでしょうか・・・?
気になる。

有難うございます。

Mika♪ #- | URL | 2011/04/15 21:51 * edit *

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