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  ミニスカート   13 

ひろかずは当時、会社の独身寮で生活していた。
彼は航空機の整備士で、以前は千葉の自宅で家族と一緒に暮らしていた。
その年の春に成田から大阪に転勤になり、とりあえず単身で寮に移ったのだった。

「家族と離れて寂しくない?」
「ちょっとね。子供もまだ小さいし・・・。いずれこっちに呼ぶつもりではいるんだけどね。」

私は車の中でひろかずが言った事を思い出していた。
家族思いなのに、私に「キスしたい」だなんて・・・。

気をつけないと・・・ と思ったが、その時既に私は彼に惹かれ始めていた。


ひろかずにもらった二枚のCDを聴きながら、私はよく彼の事を考えるようになった。
彼のほうも熱心にメールして来るようになっていた。


最初にコンビニで会った日から二週間ほど経った頃、私は再びひろかずと会う事になった。

 キスさせてね。
-ダメよ、何言ってるのよ。-

 じゃあ、手を繋ぐのはいいでしょ?
-そんなの、メールで決める事じゃないでしょ?-

ひろかずが諦めず、打ち合わせは埒があかなかった。


でも、私はきっと心の奥で何かを期待していたに違いなかった・・・。





(続く)












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  ミニスカート   14 

ミニスカートは、キスを引き寄せてしまうのだろうか・・・。


「こういうの、慣れてそうね。」
森林公園の散策コースをゆっくり歩きながら、私はひろかずに尋ねた。
平日の日中で人の気配が無く、あたりは静かだった。

「・・・というと?」
彼は立ち止まって私の方を向いた。

ひろかずは七年程前、チャットで知り合った何人かの女性と交際していた。
私はその事が気になっていた。

「俺はもともと真面目で遊んだ事が無かったんだ。
子供が生まれた時ちょっと浮気したけど、もうそんな事は止めた。」

(・・・なのに、また?)
私はちらりと気になったが、急に脇道に入って行ったひろかずに続いて曲がった。

するとひろかずは立ち止まり、いきなり私を抱き寄せてキスしようとした。
私が戸惑いながら目を閉じると、彼は動きを止めた。

「やだ。」私は目を開けた。
「いつ唇を奪われてもいいって顔してるよ。」そう言って、ひろかずは素早く口づけした。
背中に回した長い両腕でぎゅっと抱きしめられた私は、だんだん自分の心が解き放たれていくのを感じた。

時折小鳥がさえずる声が聞こえるだけのしんとした木立の中で、私とひろかずは暫らくじっと抱き合っていた。


彼と実際に会ったのはまだその日が二度目だった。


ひろかずが最初にメールして来た日からひと月後の、秋の初めの頃だった。



(続く)











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  ミニスカート   15 

-どうしてキスしたの?-
 
 好きだから

-いつから?-

 初めてミカの写真を見た時から


何故、そんな事が言えるのだろうか。
写真を見ただけで心が動かされたりするのか。
私にはその心理が分からなかった。


ひろかずはそれから間もなく、海外出張の為寮を離れた。


彼からの連絡が無くなってひと月が経ったある夜。


 ただいま
 帰ったよ

ひろかずから短いメールが届いた。
それを見た時、私は自分がどれだけ彼の帰りを待ち侘びていたのかが分かった。
(私の元に戻って来る訳じゃないのに・・・。)

ひろかずも私と同じ思いをしていた様だった。
 
 時間作れないかな・・・ おみやげがあるんだけど。



数日後、待ち合わせの場所にひろかずは少し遅れて現れた。
私は逸る気持ちを抑えながら彼の車に乗り込んだ。

「お帰りなさい。」
「ごめんね。渋滞してた。」

ひろかずは優しく微笑みながら言った。
「目を閉じて。」

(えっ?)

彼は私の指にひんやりした物を通した。

シンプルなアクリルのリングだった。
「・・・ありがとう。」

私は心で歓声を上げていた。
「嬉しい・・・。」

「イミテーションだけどね。喜んでくれて良かった。」

ひろかずは出張先で思ったほど時間がとれず、私のおみやげ探しに苦労したらしかった。

「でも、指輪は指輪だしね。」


彼も嬉しそうだった。



(続く)















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  ミニスカート   16 

「ゆうべね、いろいろ考えて眠れなかった・・・ これから先、どうするのがいいのかって。
今ならまだ、引き返せるよね。」
車の中でひろかずは、真剣な眼差しで私の方を向いて言った。

私は黙って右手の指輪を見ていた。

「ほんとに寝ずに考えてたんだ・・・ 」


ひろがずと私はパスタランチした後、ホテルに行った。



その夜、私もなかなか寝つけなかった。

 おもちゃでも指輪は指輪・・・

ひろかずに貰った指輪を見つめながら、私は彼の言葉を思い出していた。

(私は一体、何を喜んでいるんだろう・・・)

いくら考えても答えは見つからなかった。

私はひろかずとの関わりによって、自分の中にあった”隙間”を埋める事が出来たのかもしれない。
でもそれは、また別の寂しさを呼び込む事になってしまった。


それから彼と私は毎日メールを交わし、月に一度は時間を作って逢っていた。
私は彼を心の恋人として慕い、すがった。
でも彼はいつも冷静で、二人の間にきちんと線を引いている様に思えた。
それは二人の関係を続ける為にも当然の事だったのだが、私は悲しい気持ちに包まれる事が多くなった。

 これから色々あるだろうけど、ミカとの関係を大切にしていきたいと思ってるよ。


私はひろかずの言動に一喜一憂していた。



(続く)











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  ミニスカート   17 

「家族をこっちに呼ぶ事にしたよ。」
ひろかずはコーヒーカップを口に運びながら言った。
店内にはX'masソングが流れていた。

「そうなの・・・。」
私は窓の外に視線を移した。
山積みになったX'masケーキの箱の前で声を張り上げる店員と、そこに立ち止まっている親子連れやカップルが目に入った。

「来年はこんな風にイブの夜に会うのは無理ね。」
私もカップを手に取った。

「そんな事ないよ。何とでもなるさ。」

その頃、ひろかずが勤める航空会社の経営難が深刻化していた。
彼は自宅を引き払い、家族と共に社宅に移ることを余儀無くされたのだった。

「いよいよ厳しくなってきた。先が見えない状態なんだ。」
そう言いながら、ひろかずも窓の外に目をやった。


年が明けて間もなく、彼の会社は経営破綻した。
周囲の状況が激変した彼は、日々様々な対応に追われている様子だった。
当然メールの回数も減り、二人が気軽に逢える環境では無くなっていった。

 ごめんね、色々大変なんだ。
 しばらく我慢して欲しい。

ひろかずはいつもメールで謝っていた。

そして、子供たちが春休みに入ると彼は独身寮を出て社宅に移った。


まだ肌寒い、桜の咲き始めの頃だった・・・。



(続く)







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