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ミニスカート 1
2011/01/15 Sat. 16:39 [「ミニスカート」]
その日の早朝、私のPCにメールが入った。
主人は喘息のため入院しました
お約束していたようですが行けません
ヨシアキの携帯からだった。私は一瞬、訳が分からなかった。
数時間後に彼と落ち合う事になっていたからだ。
新幹線を利用し、遠路会いに来てくれる事になっていた。
奥さんが知った?
それともヨシアキの工作?
頭の中で憶測が駆け巡る。 胸がざわついた。
思えば年末に
ミカ 風邪ひいた とか、
ミカ 熱出た
といったメールの後、年明けまで彼からの連絡が途絶えていた。
てっきり風邪が治って、箱根で家族とのんびりしているのだろうと思っていたのに・・・。
(喘息だったんだ・・・。)
私は急にヨシアキの事が不憫になった。そんな体で、四時間以上かけて私に会いに来るつもりだったのだろうか・・・。
彼に会う事に期待はしていたが、不安もあった。
なぜなら、私はまだヨシアキに一度も会った事が無かったのだから・・・。
(続く)
主人は喘息のため入院しました
お約束していたようですが行けません
ヨシアキの携帯からだった。私は一瞬、訳が分からなかった。
数時間後に彼と落ち合う事になっていたからだ。
新幹線を利用し、遠路会いに来てくれる事になっていた。
奥さんが知った?
それともヨシアキの工作?
頭の中で憶測が駆け巡る。 胸がざわついた。
思えば年末に
ミカ 風邪ひいた とか、
ミカ 熱出た
といったメールの後、年明けまで彼からの連絡が途絶えていた。
てっきり風邪が治って、箱根で家族とのんびりしているのだろうと思っていたのに・・・。
(喘息だったんだ・・・。)
私は急にヨシアキの事が不憫になった。そんな体で、四時間以上かけて私に会いに来るつもりだったのだろうか・・・。
彼に会う事に期待はしていたが、不安もあった。
なぜなら、私はまだヨシアキに一度も会った事が無かったのだから・・・。
(続く)
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ミニスカート 2
2011/01/17 Mon. 16:04 [「ミニスカート」]
-東京駅で火事があったみたいだけど、大丈夫?-
大丈夫
明日はミニスカート?
その下は?
どんな事してくれる?
-ばかっ-
私はヨシアキとの前夜のメールのやりとりを思い出していた。
-気持ちが無いと、乗らない・・・-
キスする
それが彼の最後の言葉だった。
-自信があるんでしょうけど・・・
キスであなたの心を探るわ-
私のメールにヨシアキからの返信は無かった。
時計の針は午前零時を回っていた。
キスをしたいとヨシアキはよく言っていた。
キスに自信がある、とも・・・。
失神したやつもいる
自慢げな口調に幼さを感じ、私は少しずつ彼を愛おしく思い始めていた。
そもそも最初の頃、私はヨシアキにあまり関心が無かった。
寂しさと混乱の中にいた私は、誰かに救いを求めていた。
彼とはメル友を募集する目的のサイトで出会った。
内部でメール交換出来るというサイトだった。
とにかく話し相手が欲しかった私は、そこで何人かとやりとりをしていた。
私がサイトに登録してから二日程経った頃、ヨシアキがメールして来た。
年下はうざい?
「元気」というプロフネームの彼は、無邪気に聞いてきた。
早速プロフィールを見てみると、
( 関東住み 34歳 男 )
としかない。
十歳以上年下なんてね・・・。 めんどくさい。
私は悪いと思いながらも、ヨシアキを無視する事にした。
(続く)
大丈夫
明日はミニスカート?
その下は?
どんな事してくれる?
-ばかっ-
私はヨシアキとの前夜のメールのやりとりを思い出していた。
-気持ちが無いと、乗らない・・・-
キスする
それが彼の最後の言葉だった。
-自信があるんでしょうけど・・・
キスであなたの心を探るわ-
私のメールにヨシアキからの返信は無かった。
時計の針は午前零時を回っていた。
キスをしたいとヨシアキはよく言っていた。
キスに自信がある、とも・・・。
失神したやつもいる
自慢げな口調に幼さを感じ、私は少しずつ彼を愛おしく思い始めていた。
そもそも最初の頃、私はヨシアキにあまり関心が無かった。
寂しさと混乱の中にいた私は、誰かに救いを求めていた。
彼とはメル友を募集する目的のサイトで出会った。
内部でメール交換出来るというサイトだった。
とにかく話し相手が欲しかった私は、そこで何人かとやりとりをしていた。
私がサイトに登録してから二日程経った頃、ヨシアキがメールして来た。
年下はうざい?
「元気」というプロフネームの彼は、無邪気に聞いてきた。
早速プロフィールを見てみると、
( 関東住み 34歳 男 )
としかない。
十歳以上年下なんてね・・・。 めんどくさい。
私は悪いと思いながらも、ヨシアキを無視する事にした。
(続く)
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ミニスカート 3
2011/01/18 Tue. 23:28 [「ミニスカート」]
その頃の私はとにかく落ち着きたかったし、寂しさを紛らわしたかった。
毎日時間を見つけてはPCに向かい、面識の無い相手と話をした。
そうしないと不安だったのだ。
横浜で美容院を経営しているという、年上の男が話を聞いてくれた。
それで、いきなりヘンなメールが来ちゃったわけ?
ダンナと実家のお父さんの携帯に?
-そうなの。実家には電話もかかって来たのよ。
私の男友達の名を名乗って、娘さんはおられますか?って。-
彼は番号知ってたの?
-まさか。 旧姓も教えてないし。
第一、主人や父のメアドを知ってるなんて・・・。
気味悪いでしょう?-
私の実家にはそれ以降もしばらく無言電話が続いた。
電話の主は、おそらく祐樹本人だったに違いない。
恋人に会えなくなって沈んでいた私を、ずっと励ましてくれていた祐樹。
銀行員の彼は、忙しい仕事の合間にメールを送り続けてくれていたのだ。
祐樹の優しさで、少しずつ私も元気になっていた。
そんな矢先の突然の出来事だった・・・。
(続く)
毎日時間を見つけてはPCに向かい、面識の無い相手と話をした。
そうしないと不安だったのだ。
横浜で美容院を経営しているという、年上の男が話を聞いてくれた。
それで、いきなりヘンなメールが来ちゃったわけ?
ダンナと実家のお父さんの携帯に?
-そうなの。実家には電話もかかって来たのよ。
私の男友達の名を名乗って、娘さんはおられますか?って。-
彼は番号知ってたの?
-まさか。 旧姓も教えてないし。
第一、主人や父のメアドを知ってるなんて・・・。
気味悪いでしょう?-
私の実家にはそれ以降もしばらく無言電話が続いた。
電話の主は、おそらく祐樹本人だったに違いない。
恋人に会えなくなって沈んでいた私を、ずっと励ましてくれていた祐樹。
銀行員の彼は、忙しい仕事の合間にメールを送り続けてくれていたのだ。
祐樹の優しさで、少しずつ私も元気になっていた。
そんな矢先の突然の出来事だった・・・。
(続く)
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ミニスカート 4
2011/01/19 Wed. 23:23 [「ミニスカート」]
ある日の夜遅く、二階の廊下の電話が鳴った。
「はい、もしもし。」 私が出ると、
-もしもし・・・ ミカ?-
実家の母からだった。
時間が遅い事と、不安げな母の声に私は少し緊張した。
「どうしたの?こんな遅くに。」
-誰か近くにいる?-
周囲に誰も居ない事を告げると、母は慎重に切り出した。
-あなた達、夫婦仲はどうなの?-
思ってもみない問いかけだった。私は訳が分からないまま答えた。
「どうって・・・。別に普通だけど・・・。」
結婚十九年目で娘がおり、夫婦の間に大きな喧嘩も無かった。
「何でそんな事聞くの?」
一瞬黙ってから、母は思い切るように言った。
-おかしなメールが来たらしいのよ・・・ お父さんの携帯に。-
まだ何の事か分からなかった私だったが、母の口から出た名前に凍りついた。
-祐樹って人、知ってる?-
祐樹・・・ どうして母が・・・?
「・・・知らないけど?」
私は動揺を抑えながら、出来るだけ勢い良く答えた。
-ほんとね。本当に知らないのね?
お父さんからは、ミカには話すなって言われてるんだけど・・・
心配になって・・・。-
母によれば、数日前父の携帯に届いたメールの中に私と祐樹の親密な会話があったらしいのだ。
父は驚いたが、私には知らせるなと母に言ったそうだ。
ところがその翌朝、今度は祐樹と名乗る男から実家に電話がかかって来た。
「ミカさんはいらっしゃいますか?」
男の話し方はきちんとしていて、声からすると三十歳代後半位だったという。
不在だと母が言うと、私はよく実家に帰るかと聞いてきた。
滅多に帰らないと告げると、そうですかとあっさり切ったそうだ。
それから頻繁に無言電話がかかって来て、母は不安になり私に電話して来たのだった。
どういう事なんだろう・・・。
私の頭の中に、大きな疑惑の渦が巻き始めた。
(続く)
「はい、もしもし。」 私が出ると、
-もしもし・・・ ミカ?-
実家の母からだった。
時間が遅い事と、不安げな母の声に私は少し緊張した。
「どうしたの?こんな遅くに。」
-誰か近くにいる?-
周囲に誰も居ない事を告げると、母は慎重に切り出した。
-あなた達、夫婦仲はどうなの?-
思ってもみない問いかけだった。私は訳が分からないまま答えた。
「どうって・・・。別に普通だけど・・・。」
結婚十九年目で娘がおり、夫婦の間に大きな喧嘩も無かった。
「何でそんな事聞くの?」
一瞬黙ってから、母は思い切るように言った。
-おかしなメールが来たらしいのよ・・・ お父さんの携帯に。-
まだ何の事か分からなかった私だったが、母の口から出た名前に凍りついた。
-祐樹って人、知ってる?-
祐樹・・・ どうして母が・・・?
「・・・知らないけど?」
私は動揺を抑えながら、出来るだけ勢い良く答えた。
-ほんとね。本当に知らないのね?
お父さんからは、ミカには話すなって言われてるんだけど・・・
心配になって・・・。-
母によれば、数日前父の携帯に届いたメールの中に私と祐樹の親密な会話があったらしいのだ。
父は驚いたが、私には知らせるなと母に言ったそうだ。
ところがその翌朝、今度は祐樹と名乗る男から実家に電話がかかって来た。
「ミカさんはいらっしゃいますか?」
男の話し方はきちんとしていて、声からすると三十歳代後半位だったという。
不在だと母が言うと、私はよく実家に帰るかと聞いてきた。
滅多に帰らないと告げると、そうですかとあっさり切ったそうだ。
それから頻繁に無言電話がかかって来て、母は不安になり私に電話して来たのだった。
どういう事なんだろう・・・。
私の頭の中に、大きな疑惑の渦が巻き始めた。
(続く)
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ミニスカート 5
2011/01/21 Fri. 15:44 [「ミニスカート」]
実家への無言電話は初めのうち、決まって朝の八時前後にかかってきた。
祐樹がいつもメールして来た時間だ。
そのあとは夕方と夜遅く・・・ これも時間が合っていた。
問題のメールが父に送られて来た頃から、祐樹の様子が少しおかしいとは感じていた。
理由も無くメールが途切れる様になっていたからだ。
それまでは毎日欠く事無く、ほぼ決まった時間に届いていた。
それにもう一つ、気になる事があった。
父に送られて来たメールと同じものが、主人のPCにも届いていたかもしれないのだ。
ある時主人が、
「また迷惑メールだ。ユウキって誰だよ・・・。」とぼやきながら、そそくさとそれを削除していた事があった。
気になって見に行くと、既にそのメールは消えていた。
主人は私の名前がある事には気づいていなかった。
祐樹がした事なのだろうか・・・。
でも、何故?
どうやって?
色々考えた末、私は思い切って彼に聞いてみた。
-祐樹、私の実家に電話した?-
何時間後かに返信が届いた。
出来るわけないよ。
番号知らないもん。自宅も実家も。
・・・自宅も知っているという事なのだろうか。
どうしてとか、どうしたとかは無いのかとも思った。
それまでの祐樹なら、心配してあれこれ対策を考えてくれるはずだった・・・。
メールの件も話し、不安症になっているのだと言ってみた。
それから間もなく、祐樹からのメールは完全に途絶えた。
アドレスも変えた様だった。
(続く)
祐樹がいつもメールして来た時間だ。
そのあとは夕方と夜遅く・・・ これも時間が合っていた。
問題のメールが父に送られて来た頃から、祐樹の様子が少しおかしいとは感じていた。
理由も無くメールが途切れる様になっていたからだ。
それまでは毎日欠く事無く、ほぼ決まった時間に届いていた。
それにもう一つ、気になる事があった。
父に送られて来たメールと同じものが、主人のPCにも届いていたかもしれないのだ。
ある時主人が、
「また迷惑メールだ。ユウキって誰だよ・・・。」とぼやきながら、そそくさとそれを削除していた事があった。
気になって見に行くと、既にそのメールは消えていた。
主人は私の名前がある事には気づいていなかった。
祐樹がした事なのだろうか・・・。
でも、何故?
どうやって?
色々考えた末、私は思い切って彼に聞いてみた。
-祐樹、私の実家に電話した?-
何時間後かに返信が届いた。
出来るわけないよ。
番号知らないもん。自宅も実家も。
・・・自宅も知っているという事なのだろうか。
どうしてとか、どうしたとかは無いのかとも思った。
それまでの祐樹なら、心配してあれこれ対策を考えてくれるはずだった・・・。
メールの件も話し、不安症になっているのだと言ってみた。
それから間もなく、祐樹からのメールは完全に途絶えた。
アドレスも変えた様だった。
(続く)
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ミニスカート 6
2011/01/22 Sat. 23:01 [「ミニスカート」]
祐樹はよく、ミカは悪くないと言っていた。
既婚者でありながら、他の家庭の男性を想い、悩んでいた私を理解しようとし、肯定してくれた。
今まで頑張ったんだから・・・。
どんな事情があったとしても、自分が間違っている。
でも、寂しくて耐えられない。
私はどうしてなのか、どうすればいいのかが分からないでいた・・・。
好きだから、守ってあげたい。
僕がついてるよ。
こうして祐樹に励まされるうち、私は少しずつ気が楽になっていった。
メールが楽しみになり、二人の距離が近づいていくのを感じた。
彼は、私とはメールのやりとりだけの関係でいいと言っていた。
実は、祐樹と知り合ったのもメル友を探す為のサイトの中だった。
寂しさを持て余していた私が考え付いた、たった一つの方法だったのだ。
(続く)
既婚者でありながら、他の家庭の男性を想い、悩んでいた私を理解しようとし、肯定してくれた。
今まで頑張ったんだから・・・。
どんな事情があったとしても、自分が間違っている。
でも、寂しくて耐えられない。
私はどうしてなのか、どうすればいいのかが分からないでいた・・・。
好きだから、守ってあげたい。
僕がついてるよ。
こうして祐樹に励まされるうち、私は少しずつ気が楽になっていった。
メールが楽しみになり、二人の距離が近づいていくのを感じた。
彼は、私とはメールのやりとりだけの関係でいいと言っていた。
実は、祐樹と知り合ったのもメル友を探す為のサイトの中だった。
寂しさを持て余していた私が考え付いた、たった一つの方法だったのだ。
(続く)
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ミニスカート 7
2011/01/27 Thu. 00:23 [「ミニスカート」]
私は祐樹が好きだった・・・ 好きだと思っていた。
僕はするめ
この一言で、私は彼に興味を持った。
面白い人・・・。
屈託の無い明るい性格の祐樹とのメール交換はとても楽しかった。
他にも何人かとやりとりをしていたが、彼に私のアドレスを知らせてからそのサイトは退会した。
おはよう。今日もいい天気だね。
僕がいるから頑張って。
祐樹は、忙しい仕事の合間に出来る限り、一日に何回もメールを送ってくれた。
私が寂しがったからだ。
私にはひろかずという恋人がいた。
彼を愛していたが、事情があって長い間会えずにいた。
行き場の無い苦しみを抱えたまま、私はどうする事も出来ずにいた。
人それぞれ、愛し方は違うよ。
僕はミカを見守る・・・。
祐樹に励まされ、私が落ち着いて来るとメールも一定の時間に送られて来るようになった。
写メを交換すると、祐樹ははしゃいだ。
彼は四歳年下だったが、私より大人に見えた。
その祐樹が時々睡眠薬を飲んでいると聞いて、少し驚いた。
以前、不眠症だったんだ。
それ以来・・・。
私は何故かその事に、違和感を覚えていた。
(続く)
僕はするめ
この一言で、私は彼に興味を持った。
面白い人・・・。
屈託の無い明るい性格の祐樹とのメール交換はとても楽しかった。
他にも何人かとやりとりをしていたが、彼に私のアドレスを知らせてからそのサイトは退会した。
おはよう。今日もいい天気だね。
僕がいるから頑張って。
祐樹は、忙しい仕事の合間に出来る限り、一日に何回もメールを送ってくれた。
私が寂しがったからだ。
私にはひろかずという恋人がいた。
彼を愛していたが、事情があって長い間会えずにいた。
行き場の無い苦しみを抱えたまま、私はどうする事も出来ずにいた。
人それぞれ、愛し方は違うよ。
僕はミカを見守る・・・。
祐樹に励まされ、私が落ち着いて来るとメールも一定の時間に送られて来るようになった。
写メを交換すると、祐樹ははしゃいだ。
彼は四歳年下だったが、私より大人に見えた。
その祐樹が時々睡眠薬を飲んでいると聞いて、少し驚いた。
以前、不眠症だったんだ。
それ以来・・・。
私は何故かその事に、違和感を覚えていた。
(続く)
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ミニスカート 8
2011/01/27 Thu. 13:45 [「ミニスカート」]
私は祐樹に一度だけ会った事がある。
正確に言うと、”至近距離にいた”だけなのだが・・・。
80年代にヒットした、あるUKのアーティストの来日公演にひろかずと行った時の事だった。
ライブハウスの前で開場を待っている間、視線を感じてその方を向くと、見覚えのある男が一人立っていた。
祐樹だった。
驚く私に、彼は人懐っこい笑顔を向けた。
テーブル席に着いた私の真向かいに祐樹は座った。
祐樹に背を向けて座ったひろかずは、彼に気付かないままだった。
祐樹は会場内を写すふりをして、私を何枚か撮っていた。
彼は楽しそうに微笑んで来たが、私はあまりいい気がしなかった。
(彼の生まれ故郷にたくさんいるっていう、野猿みたいな人ね。)
一人はしゃぐ祐樹を見て、私はそう思った。
楽しみにしていたライブも、終始彼が気になって集中出来なかった。
そして、その日を境に祐樹の言葉が微妙に変わっていった。
ひろかずを強く意識する様になったのだ。
私はライブの話はしていたが、誰かと行くという事は特に話していなかった。
元カレと行ったんだね。
まだ彼と終わった訳ではない、会いにくくなっただけ。
「元彼」ではない・・・。
祐樹は敏感に反応した。
これからは僕がミカのパートナーだと自覚してる。
寂しいなら、僕のとこに来ればいい。
何かのスイッチが入ったみたいだった。
(僕のとこにって、自分にも家庭があるのに・・・。何言ってるんだろう・・・。)
私はその時はまだ、祐樹の心の大きな動きに気付かなかった。
(続く)
正確に言うと、”至近距離にいた”だけなのだが・・・。
80年代にヒットした、あるUKのアーティストの来日公演にひろかずと行った時の事だった。
ライブハウスの前で開場を待っている間、視線を感じてその方を向くと、見覚えのある男が一人立っていた。
祐樹だった。
驚く私に、彼は人懐っこい笑顔を向けた。
テーブル席に着いた私の真向かいに祐樹は座った。
祐樹に背を向けて座ったひろかずは、彼に気付かないままだった。
祐樹は会場内を写すふりをして、私を何枚か撮っていた。
彼は楽しそうに微笑んで来たが、私はあまりいい気がしなかった。
(彼の生まれ故郷にたくさんいるっていう、野猿みたいな人ね。)
一人はしゃぐ祐樹を見て、私はそう思った。
楽しみにしていたライブも、終始彼が気になって集中出来なかった。
そして、その日を境に祐樹の言葉が微妙に変わっていった。
ひろかずを強く意識する様になったのだ。
私はライブの話はしていたが、誰かと行くという事は特に話していなかった。
元カレと行ったんだね。
まだ彼と終わった訳ではない、会いにくくなっただけ。
「元彼」ではない・・・。
祐樹は敏感に反応した。
これからは僕がミカのパートナーだと自覚してる。
寂しいなら、僕のとこに来ればいい。
何かのスイッチが入ったみたいだった。
(僕のとこにって、自分にも家庭があるのに・・・。何言ってるんだろう・・・。)
私はその時はまだ、祐樹の心の大きな動きに気付かなかった。
(続く)
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ミニスカート 9
2011/01/28 Fri. 15:31 [「ミニスカート」]
祐樹はなぜ、ひろかずにメールを送らなかったのだろうか?
彼の目的は何だったのだろう・・・。
私には祐樹の気持ちがよく分からなかった。
案外何の考えも無かったのかもしれない、とも思った。
ひろかずが、将来私を故郷に呼ぶつもりでいるらしいとメールした時の事だ。
時間を置かずに祐樹から返信があった。
それって、どういう事?
私もひろかずの言葉には少し驚いていた。
周囲の状況から考えて、二人に明るい未来など期待出来るはずは無い。
だから、彼の言葉を鵜呑みにはしていなかった。
どういう事なんだろうね。
でも、祐樹はその事がずっと気になっている様子だった。
祐樹は、「いつでもいつまでも」私を見守ると言ってくれていた。
私は素直に嬉しかった。
いつも分ってくれて、いつまでも見守ってくれる・・・。
彼の優しさには限りが無いのだと思っていた。
”保険”・・・ だったのかもしれない。
どうであれ、結果として祐樹を傷つけてしまった事に違いはない。
そして私も傷ついた・・・。
ひろかずには何も言わなかった祐樹の気持ちを考えると、私は酷く胸が痛んだ。
(続く)
彼の目的は何だったのだろう・・・。
私には祐樹の気持ちがよく分からなかった。
案外何の考えも無かったのかもしれない、とも思った。
ひろかずが、将来私を故郷に呼ぶつもりでいるらしいとメールした時の事だ。
時間を置かずに祐樹から返信があった。
それって、どういう事?
私もひろかずの言葉には少し驚いていた。
周囲の状況から考えて、二人に明るい未来など期待出来るはずは無い。
だから、彼の言葉を鵜呑みにはしていなかった。
どういう事なんだろうね。
でも、祐樹はその事がずっと気になっている様子だった。
祐樹は、「いつでもいつまでも」私を見守ると言ってくれていた。
私は素直に嬉しかった。
いつも分ってくれて、いつまでも見守ってくれる・・・。
彼の優しさには限りが無いのだと思っていた。
”保険”・・・ だったのかもしれない。
どうであれ、結果として祐樹を傷つけてしまった事に違いはない。
そして私も傷ついた・・・。
ひろかずには何も言わなかった祐樹の気持ちを考えると、私は酷く胸が痛んだ。
(続く)
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ミニスカート 10
2011/01/29 Sat. 15:08 [「ミニスカート」]
そもそも、何故私はそんなに寂しがる必要があったのだろうか・・・。
それは私が三十代半ばの、娘が幼稚園に入ってしばらく経った頃から始まった。
育児から解放された私はほっとした反面、自分の中に”隙間”が出来てしまった様な感覚に襲われた。
そして次第に言いようの無い切なさが”隙間”を大きく広げていった。
でも私は、こんな事は一時の感傷に過ぎない、贅沢なわがままだと自分に言い聞かせていた。
家族の入退院や娘の進学などで忙しくなると”隙間”は一時的に消えたが、時間が出来るとまた現れ、それを繰り返していた。
そんな私がひろかずに出会ったのは、娘が中学に入った年の夏の終わり頃だった。
当時、私はある音楽主体のSNSサイトに登録していた。
音楽好きの私はUSやUKのアーティストと「フレンド」になり、メールのやりとりを楽しんでいた。
ある日、私のページに初めて日本人男性からメールが届いた。
外国人とばかり話していた私は、少し驚いた。
それが、ひろかずだった・・・。
彼は私と同じく、あるUKのアーティストのファンだったのだ。
たちまち意気投合した私達は、毎日メールを交換した。
趣味が合う見知らぬ異性との「つき合い」に、私の気持ちは高揚していた。
思わぬ展開に後ろめたさを感じながらも、私は少しずつひろかずに惹かれていった・・・。
(続く)
それは私が三十代半ばの、娘が幼稚園に入ってしばらく経った頃から始まった。
育児から解放された私はほっとした反面、自分の中に”隙間”が出来てしまった様な感覚に襲われた。
そして次第に言いようの無い切なさが”隙間”を大きく広げていった。
でも私は、こんな事は一時の感傷に過ぎない、贅沢なわがままだと自分に言い聞かせていた。
家族の入退院や娘の進学などで忙しくなると”隙間”は一時的に消えたが、時間が出来るとまた現れ、それを繰り返していた。
そんな私がひろかずに出会ったのは、娘が中学に入った年の夏の終わり頃だった。
当時、私はある音楽主体のSNSサイトに登録していた。
音楽好きの私はUSやUKのアーティストと「フレンド」になり、メールのやりとりを楽しんでいた。
ある日、私のページに初めて日本人男性からメールが届いた。
外国人とばかり話していた私は、少し驚いた。
それが、ひろかずだった・・・。
彼は私と同じく、あるUKのアーティストのファンだったのだ。
たちまち意気投合した私達は、毎日メールを交換した。
趣味が合う見知らぬ異性との「つき合い」に、私の気持ちは高揚していた。
思わぬ展開に後ろめたさを感じながらも、私は少しずつひろかずに惹かれていった・・・。
(続く)
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ミニスカート 11
2011/01/30 Sun. 21:02 [「ミニスカート」]
今度、リアルで会わない?
メールのやり取りを始めて十日ほど経った頃、ひろかずは私を誘ってきた。
-何言ってるの、ダメよ。-
同性の友人とでさえ、ゆっくり外出した事がなかった「籠の鳥」の私は彼の誘いを軽くあしらった。
少しの時間でいいからさ・・・。
ひろかずの粘りに根負けした私は、少しだけ譲歩した。
-私の家に来てくれるならいいわよ。主人も音楽好きだし・・・。 紹介するわ。-
いきなりミカの家に、というのはちょっと・・・
だから、その前に少しだけ二人で会わない?
ひろかずは、ああでもこうでもと折り合いをつけようとしてきた。
彼の度重なる誘いの言葉に、私の砦は徐々に崩れかけていた。
明日、そっち方面にドライブするよ。
どっかいいとこある?
ひろかずは強行手段に出た。
そして、出張でしばらく戻らないから会っておきたいんだけど、とつけ加えた。
-せっかく来るんだったら、少しだけ案内してもいいけど・・・。
ほんと、時間無いからね。-
こうして、私はついに彼に会う事になった。
(続く)
メールのやり取りを始めて十日ほど経った頃、ひろかずは私を誘ってきた。
-何言ってるの、ダメよ。-
同性の友人とでさえ、ゆっくり外出した事がなかった「籠の鳥」の私は彼の誘いを軽くあしらった。
少しの時間でいいからさ・・・。
ひろかずの粘りに根負けした私は、少しだけ譲歩した。
-私の家に来てくれるならいいわよ。主人も音楽好きだし・・・。 紹介するわ。-
いきなりミカの家に、というのはちょっと・・・
だから、その前に少しだけ二人で会わない?
ひろかずは、ああでもこうでもと折り合いをつけようとしてきた。
彼の度重なる誘いの言葉に、私の砦は徐々に崩れかけていた。
明日、そっち方面にドライブするよ。
どっかいいとこある?
ひろかずは強行手段に出た。
そして、出張でしばらく戻らないから会っておきたいんだけど、とつけ加えた。
-せっかく来るんだったら、少しだけ案内してもいいけど・・・。
ほんと、時間無いからね。-
こうして、私はついに彼に会う事になった。
(続く)
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